不動明王



萬福寺 不動明王像
不動威怒明王(ふどういぬみょうおう)を略して不動明王や不動尊と呼びます。不動は揺るぎない菩提心、悟りを求めるこころを表します。明王は仏法を能く護るから明王といいます。


梵名はアチャラ・ナータ






不動明王は大日如来(だいにちにょらい)の教令輪身(きょうりょうりんじん)であります。教令輪身とは仏が恐ろしい様相をして、仏法に従わない者や妨害する者、また間違った教えに入ろうとする者を、力ずくでも正しい教えに導こうとする姿です。




萬福寺 不動明王像
因みに教令輪身は仏の三輪身の1つで、他に自性輪身(じしょうりんじん)は如来の形で、悟りそのものの姿であります。正法輪身(しょうぼうりんじん)は菩薩の形で人々を救うために如来の悟りを優しい姿で説きます。


 不動明王は「お不動さん」として「観音さん」(観音菩薩かんのんぼさつ)やお地蔵さん(地蔵菩薩じぞうぼさつ)などと並んでよく耳にする仏であります。その功徳に行者の残食を喰らうとされます。残食は私たちの業煩悩であり、不動明王は私たちの業苦や煩悩を喰らい尽くしてくれます。




お姿は、童子の形は仏の使者を表し、身体の色の青黒は魔物をおさえる意味であります。


 額のしわは煩悩を智慧に変える意味。


 右の牙が上に向いているのは仏の智慧で上方の天魔を恐れ従わせ、左唇を外にひるがえすのは慈悲をもって人々を救う意味です。


 大きな岩に座る姿は、岩を煩悩に喩え、あるいは菩提心に喩えます。矛盾するようですが煩悩即菩提の意味であり、その菩提心が動じない意味です。
萬福寺 不動明王像
 左手の索(さく)即ち綱は仏法に反する者を縛ってでも引き入れ、右手の剣は仏の智慧の剣でその者の業苦煩悩を断ち切る。


 全身に燃えさかる炎はカルラ炎といい、火生三昧(かしょうざんまい)の境地で人々の業苦煩悩を焼き尽くしてくれます。